非配偶者間生殖医療を支える専門カウンセリング研修
一般社団法人日本生殖補助医療標準化機関(JISART)は、2026年7月25日(土)・26日(日)に「第32回 非配偶者間体外受精に関わるカウンセラー実務研修」を開催いたしました。この研修は、第三者から提供された精子や卵子を用いる生殖補助医療、いわゆる非配偶者間生殖医療において、専門的な知識と実務能力を持つカウンセラーを育成し、その質を継続的に高めることを目的として、年に2回行われているそうです。

今回の研修では、「JISART非配偶者間生殖補助医療における治療前カウンセリングの標準化と内容のさらなる検討」が中心テーマとなりました。この医療は、単に医学的な治療選択に留まらず、提供を受ける方、提供する方とその家族、そして何よりも生まれてくる子どもの将来に関わる、心理的・社会的・倫理的な課題を深く伴います。JISARTでは、当事者が十分に考え、納得した上で意思決定できるよう支援する専門的なカウンセリングを、医療の質を支える重要な基盤と位置づけているとのこと。私も、この分野におけるカウンセリングの重要性には深く共感いたします。
なぜ、非配偶者間生殖医療でカウンセリングが重要なのでしょうか
第三者からの精子や卵子の提供による生殖補助医療は、医学的に妊娠が難しいご夫婦にとって、確かに一つの希望をもたらす選択肢となりえます。しかし、それは治療を受けるご夫婦だけでなく、提供者、その配偶者やご家族、そして生まれるお子さんの人生にも大きな影響を与えるものです。検査や治療の手順を医学的に理解するだけでは、本当に納得のいく意思決定には不十分な場合もあるでしょう。
治療を始める前には、医学的な内容に加え、次のような多岐にわたるテーマを具体的に考え、ご夫婦や関係者がそれぞれの気持ちや考えを確認することが非常に大切だと感じます。
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精子・卵子提供を受けて親になることを、ご夫婦それぞれがどのように受け止めるのか
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遺伝的なつながりの有無を、ご家族の中でどのように理解していくのか
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提供者と被提供者、双方のご家族との関係をどのように築くのか
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生まれるお子さんへの告知と、出自を知る権利をどのように考えるのか
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もし治療がうまくいかなかった場合や、妊娠・出産後にどのような支援が必要になるのか
カウンセリングは、特定の結論に導いたり、治療を勧めたりするものではないとされています。中立的な対話を通じて、当事者が抱える迷いや不安を言葉にし、必要な情報を得ながら、ご自身の価値観に基づいて治療を受けるかどうかを判断できるよう支えるもの。これは、人生の大きな選択を前にした方々にとって、かけがえのないサポートとなるのではないでしょうか。
医学的説明とは異なる「中立的な専門支援」
JISARTガイドラインでは、被提供者ご夫婦、提供者、そしてその配偶者(必要に応じてご家族)が同意を行う前に、生殖補助医療の知識と心理的・社会的事項に関する専門知識を持つカウンセラーによる、中立的なカウンセリングが適切に行われることを求めているそうです。
医師による説明は、治療方法や身体的なリスク、見込まれる経過などを医学的に理解するために不可欠です。一方でカウンセリングでは、「この治療を自分たちの人生や家族の中でどう位置づけるか」「将来、子どもとどのように対話するか」といった、一つだけの正解がない問いについて、じっくりと考える時間を設けます。医学的説明とカウンセリング、この二つの支援が揃うことで、当事者が疑問や迷いを率直に表現し、自律的に意思決定できる環境が整うのだと、私は考えます。
「生まれる子どもの福祉」を治療前から考える大切さ
JISARTガイドラインは、基本方針の一つとして「生まれた子等の福祉の確保」を掲げ、さらに「出自を知る権利の尊重」を明記しています。治療によって生まれる可能性のあるお子さんは、治療前の意思決定に自ら参加することはできません。だからこそ、治療を始める前から、そのお子さんの立場に立って将来を考えることが、私たち大人に求められる大切な配慮だと感じます。
出生の経緯をどのように伝えるのか、お子さんが自身の出自について知りたいと考えたときに、どのように向き合うのか、ご家族としてどのように対話を重ねていくのか。これらは出産後に初めて考えるのではなく、治療前からご夫婦で話し合い、必要な情報と支援に繋がっておくことが重要です。JISARTガイドラインでは、お子さんの出生後も、実施医療施設が被提供者のカウンセリングニーズに対応できる体制を整えることを求めているそうです。これは、本当に長期的な視点に立った、素晴らしい取り組みだと感じました。
第32回研修で治療前カウンセリングの標準化をさらに検討
今回の実務研修では、「JISART非配偶者間生殖補助医療の治療前カウンセリングの標準化と内容に関する更なる検討」が中心テーマとなりました。施設間で支援の質を安定して確保するための共通基盤と、カウンセリングで扱う内容について具体的に検討されたようです。

研修は2026年7月25日(土)・26日(日)に開催され、東京リプロダクティブカウンセリングセンターの平山史朗先生が講師を務められました。JISART施設のカウンセラーやフォローアップ部会相談員が対象となり、倫理委員会が治療前カウンセリングに求めるもの、標準化の検討、そして姉妹間卵子提供や兄弟間精子提供、知人からの提供といった具体的なケースにおけるカウンセリングの組み立てとチェックポイントなどがプログラムに含まれていたとのことです。
当事者やご家族の背景、提供に至る経緯、そして価値観は、一組ごとに異なります。標準化とは、相談内容を画一的にすることではなく、重要な視点を漏れなく共有しながら、個々の状況に応じた支援に繋げるための共通基盤を整えることにある、という考え方に私も納得いたしました。
年2回の継続研修で、専門性を更新し続ける
非配偶者間生殖医療を取り巻く社会環境や制度、家族に関する価値観は、常に変化し続けています。このような状況の中で、カウンセラーには、医学・心理・社会の知識を更新するだけでなく、ご自身の実践を振り返り、複雑な状況に中立的に向き合う力が求められるでしょう。
JISARTは、「非配偶者間体外受精に関わるカウンセラー実務研修」を年に2回開催し、今回で第32回目を迎えたそうです。単発の研修で終わらせず、継続的に学び合う場を設けることで、施設や担当者による支援のばらつきを減らし、JISART全体のカウンセリングの質向上を図っているとのこと。また、JISARTの認定審査では、心理カウンセリング部門について、必要なときに対応できる体制、カウンセラーの資格・経験・教育方法・定期的な研修、独立した相談環境、治療中・治療後も利用しやすい状況などを確認しているそうです。研修と認定審査を両輪とすることで、専門人材の育成を各施設の継続的な品質管理に繋げている点も、安心感につながりますね。
治療は「出産」で終わらない-長期的なフォローアップ
JISARTは2012年、精子または卵子の提供による体外受精で子どもを授かったご家族と、提供に協力したご家族を継続的に支援するため、「フォローアップ部会」を設立しました。お子さんの発達、親子・家族関係、告知、出自を知る権利、法律・制度などに関する相談に、必要に応じて専門家が連携して対応しているそうです。
治療前カウンセリングで将来を見据え、治療後も必要なときに相談できること。この連続した支援こそが、非配偶者間生殖医療の質を支える重要な要素である、とJISARTは考えているとのこと。私も、この長期的な視点を持つことの重要性を強く感じます。
今後の展望とJISARTについて
JISARTは今後も、年2回の実務研修を通じてカウンセラーの知識と実践力を高め、治療前カウンセリングの標準化と内容の充実を進めていく方針です。医学的な安全性や治療技術に加え、当事者の自律的な意思決定、生まれる子どもの福祉、提供者を含む関係者への長期的な支援を重視し、精子・卵子提供による生殖医療を安心して検討できる環境づくりと、生殖補助医療全体の質向上に取り組んでいくとのこと。
この「非配偶者間生殖医療」は、JISARTガイドラインの対象である、第三者から提供された精子または卵子を用いる生殖補助医療を指します。提供胚の移植および代理懐胎は同ガイドラインの対象外であることも、ご理解いただきたい点です。
参考として、JISARTのガイドラインや活動について、より詳しく知ることができるウェブサイトをご紹介いたします。
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JISART「精子又は卵子の提供による生殖補助医療(ART)に関するJISARTガイドライン」: <https://jisart.jp/guidline/>
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JISART「認定基準と規則」: <https://jisart.jp/rule/>
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JISART「フォローアップ部会」: <https://jisart.jp/followup/>
JISARTは、2003年3月に設立された一般社団法人で、生殖補助医療の実施規定・基準の作成と運用、及び学術調査研究事業を行っています。本部は大阪府大阪市にあり、理事長は絹谷 正之氏です。詳しい情報はJISARTのウェブサイトでご確認いただけます。
- JISARTウェブサイト: <https://jisart.jp/>
今回ご紹介したJISARTの取り組みは、新しい家族の形を考える上で、私たちに多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。賢作でした。


